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知恵の端緒を掴む|自著紹介

 この記事を通してみなさんにお伝えしたいことは、考えるということの意味です。それをお伝えする上で、自著「それでも生きるなら、善く生きる」の本文の一部を以下に掲載いたします。掲載部分だけでも、考えるということの要点は示してあるので、ものを考える上で必要なことは、お伝えできると思います。自著の紹介を兼ねるものではありますが、それをお伝えできればと思います。本書をみなさんに知ってもらうよい機会にもなれば嬉しいです。以下本文。

 

 

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 これから見てもらうのは、とある青年が(日々の生活の中で自身に生じた考えを)綴ったノートである。彼のノートを通して彼の心の歩みを辿ってみてほしい。 



  Ⅰ

 

 今日もまた部長にひどく怒られた。ありえないだろ、こんなんじゃダメだ、今まで何やってきたんだよ、やる気あんのか、これじゃ厳しいな、もう無理だろ、何も変わってない、こんな調子で一時間近く延々と怒られるだけだった。自分は一体ここで何をしているのか、何のために生きているのか、そんな思いになった。
 辞めたい気持ちも確かにある。でも、今会社を辞めたところで、どうやって生計を立てればいいのか分からないし、ここで働いていれば、とりあえず生活していられる、生きていられる、普通に社会人として働いていられる。そうした方が正しいと思うし、親もそれを望んでいる気がする。それに、その内、昇進もあるかもしれない。そうなれば、給料も上がり親も喜ばせられる。外的な物に支えられて、今を生きたい。目に見える形で報われたい。努力に対しての目に見える結果が、形が、欲しい。それこそが自分の今までの、努力を、過去を、その正しさを、証明してくれるものだと思うから。それさえ手に入れば心は安定する、きっと幸せになれる。
 この会社に入る以前もとくに幸せに生きてきたわけではなかった。それでも、あと少し努力すれば今度こそは何か変えられるんじゃないか、その思いだけでやっとの思いでこの会社に入った。だから、私は、まだ辞めるわけにはいかない。
 結局、今の私にはまだ、正社員という肩書と安定した収入が必要だ。そのためなら多少の無理は止むを得ない。辛抱強く耐え続けろ。辛いだけでも、この今は間違ってないと信じ続けろ。そうすれば、きっといつか報われる、きっと何とかなる。だから今は、どうにか頑張ろう。 

                                (某月某日)

 相変わらず部長には怒られる。周囲ともあまり上手くいってない。昇進も出来なかった。何にも手に入らない。何の結果も出せない。何やっても上手くいかない。今までだって、あと少し頑張れば良い方向に向かう、そう言い聞かせてどうにか頑張ってきた。でも、結局報いなんてなかった。
 もうこれ以上どう頑張ればいいのか。既に私は、頑張り過ぎて心が張り裂けそうなのだ。苦しい。何をどう考えても苦しいだけで、苦しみは去ってくれない。一体どこまで苦しめばいいのか。泣きたい。でも泣いてもどうにもならない。今までだって泣いてきたから、それは分かっている。
 苦しいだけの人生と、向き合い続けることに、何の意味があると言うのだ。私みたいなやつは、どうやって生きていけばいいんだ。止まない雨はない、あと少しの努力で報われる、そんな言葉じゃ救われないから、苦しみ悩み無気力になっているのだ。でも、本当に救いが必要なのは、こんなことを言わないと気が済まないような人なのだ。
 一体自分は何をやっているのか。自分でも自分のしていることがよく分からない。もう疲れた。報われたい。救いが欲しい。もうどうすればいいのか分からない。なんで自分ばかりこんなに不幸なんだ。

                                (某月某日)

 先日、仕事帰りに駅に向かって歩いていたら、先輩のCさんが話しかけてきた。私は、少し面倒だと思いつつも二人で近くの公園に行き少し話した。以下に、その時の会話を記す。

C 最近少し元気なさそうだったから、ちょっと気になって…。
私 なんか、心配させてすみません。
C いやぁ、それは全然問題ないんだけど…。何か僕に出来ることがあったら言ってよ。話聞くぐらいしか出来ないかもしれないけど…。
私 …………。もうどうすればいいのか分からないです。
C 何がどう分からないの?
私 辛いことばかりで、どうすればいいのか分からないです。
C どうすればいいのか分からないかぁ。君はどうしたいの、どうなりたいの?
私 分からないです。もう何が何だか分からないです。
C でも、君が何を求めているのかが分からなければ、どうすべきかも分からないとは思わない?
私 …………。幸せになりたいです。
C それなら、それについて考えればいいのでは?
私 もう十分考えました。それに、考えてどうにかなる問題じゃないです。どうせ幸せにはなれないと思います。私はそういう人間なんです。
C そうか…。でももしかしたら、君が、どうすればいいのかが分からないのは、実は、それをしっかりと考えられていないからかもしれないのでは?
私 そんなはずは…。
C もしよければ、君がそれについてしっかりと考えることができるように、考えるとはどういうことなのかを伝えられればと思うのだが、どうだろうか?
私 考えることがどういうことかではなくて、幸せになるには具体的にどうすればいいのかを教えてくれませんか?
C いや、それを知るためには考えることが必要だと僕は言っているのだよ…。
私 うーん…。
C ところで、君はさっき、幸せになりたい、と言っていたが、そもそも幸せを何だと考えているのかな?
私 …。そんなことに正解なんてあるのでしょうか?
C どうだろう? あるかもしれないし、ないかもしれない。でも、君がこの問いに最も相応しいと思う答えを、示してくれないか?
私 うーん。(幸せとは何なのか? 友達もいない、仕事も上手くいかない、職場の人間関係も上手くいかない、欲しいものが手に入らない、だから苦しくて、それを手に入れれば幸せになれると思ったから、僕は頑張って生きてきた。だから、)欲しいものを手に入れることで生じる心だと思います。
C では、その答えは、幸せそれ自体が何を意味するか、つまり本質を示しているものだと言えるだろうか?
私 幸せそれ自体とか本質というのは、一体どういうことですか?
C 疑う余地のない、その言葉そのものの意味、を示したものなのか、ということだ。
私 そう言われると…、分からないです…。
C しかし、幸せそれ自体が何なのかを分かっていない人が、幸せを求めるために何をすべきかが、どうして分かるのだろうか? なぜなら、その人は、幸せとは、なるものなのか、掴むものなのか、探すものなのか、もしくは、それらとは別のものなのか、それがどういう性質をもつものなのか、を分かっていないのだから。
私 そうかもしれません。
C では逆に、幸せそれ自体がどういう性質をもつものなのかをより正確に分かっていれば分かっている程、その人は、その性質に適した仕方でそれを求めることができるはずだね?
私 そうだと思います。
C では、幸せそれ自体が何なのかを本当に分かっている人とは、幸せを求めるために何をすべきか、が分かっている人だと言えるね?
私 言えると思います。
C では君は、それこそを、まず、知る必要があるのではないだろうか?
私 そうかもしれません。
C では、その幸せそれ自体を知るためには、どうすればいいのか? やはり考えることが必要になる。どうだろう、僕の話を聞く気になっただろうか?
私 …。分かりました。ぜひ話を聞かせて下さい。
C 分かった。と言っても、肝心なことは既に話してしまったのだがね…。もう少しだけ補足しておくよ。
私 お願いします。
C 要するに、考えるとは、対象を疑うことで知る、ということだ。しかし、やみくもに考えればいいってことではない。本質において考えていくことが大事で、本質を離れたところで、考えたつもりになっていてはだめなんだ。だから、幸せに関連するあれこれを考える前に、まず、幸せそれ自体が何なのかを考えることに努めなければならないんだ。
 具体的にどうすればいいのかと言うと、自問自答を繰り返すということだ。問う(疑う)ことで分かる。その分かったことを踏まえてさらに問う。それを繰り返す。幸せそれ自体が何なのか、を分かるまで繰り返す。それだけだ。もうこれ以上疑えることがないところまで徹底して疑う。そうすることで、揺るぎないもの、つまり本質を掴み取っていく。それが、本当の意味での考えるということだ。そして、このようにして知り得たことこそが、本当の知識なんだ。僕から伝えられることとしては、こんなところだ。
私 分かりました。
C ところで、このようにして、自分自身でしっかりとものを考えられる人が、幸せを求めようとするならば、その人は、悩んだりするだろうか? その人はきっと、考えるはずだね?
私 …。はい。そうだと思います。
 Cさんと話すまでの私は、幸せをやみくもに探し求めているだけで、結局それは見つからず、途方に暮れるだけでした。それもそのはず、幸せそれ自体を分からずに、幸せを求めるにはどうすればいいのかが分かるはずはないのですから。そもそも、幸せそれ自体が何を意味するのかなんて、考えようとしたことすらなかったのです。
 要するに私は、考えるということを、まるでしていなかったのかもしれません。そのことをCさんに気付かされたように思います。
C それが分かったなら、もう大丈夫だ。後は、君自身で考えていくことができるのだから。

 あの日Cさんが話してくれたことは、すごく大事なことのような気がする。私には、本当の意味で、考えるということが出来るだろうか。

                                (某月某日)


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 本書を通して、善く生きるための手掛りを掴んでもらえればと思います。
  

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